大型2種免許合宿の夏
3年前の夏に仕事を1ヶ月休んで大型2種免許を取得するための合宿を受けに行った。
大型2種っていう免許は路線バスなんかを運転するための資格。
普通免許の2種ならタクシーの運ちゃんに必要な免許。2種というのは旅客運送に必要な資格な事。
僕は乗り物を運転するのが大好きで前々からバスを運転するための免許を取りたいと思っていたので、決心を行動に移せるうちに行ってしまおう!と思い立って、職場に無理言って合宿に参加する事にした。
場所は沼津。
静岡県自動車学校沼津校というところなら他よりも若干費用を抑えめに免許を取れそうだという事で、そこに決めていざ出発。
バスってのは運転席よりも後ろに前輪があるから、普通自動車で右左折する感覚と違って非常に面白い。
大型免許だと練習コースに『あい路』というのがあるんだけど、これが中々慣れなくてコツをつかむのに苦戦して楽しかった。
自動車学校の近くにある普通のアパートが合宿参加者の寮として利用できるようになっていて、毎日そこからお迎えのハイエースに乗って学校へ行き、学科と実技を受けて、それが終わったらまた送迎ハイエースに乗って送ってもらう。
そういう毎日がおよそ2週間続く。
他の時間は自由だから何をしていてもいいんだけど、僕は帰りが遅くならない日は毎日ランニングに出かけていた。
沼津市は駿河湾に面していて、その海沿いに『千本浜公園』という海と富士山と夕日を眺めながらランニングするのに最高のスポットがあったから、自動車学校にはランニングの格好で行って、帰ってきたらその足でそのまま浜辺に走りに行っていた。
あそこは本当によかった。是非また行きたい。
気持ちよくクタクタになれるナイスなランニングコースだと思う。
ああいう気持ちよさを経験すると田舎で暮らすのもいいだろうなーって思ったりもするんたけど、その素敵な海沿いの公園でビックリ仰天なハプニングが起きてしまった。
今はもう合宿で勉強したことのほとんどを覚えちゃいないが、あの日の千本浜公園で見た光景は今でも鮮明に覚えている。
その日は午前中で授業が終わり、まだ日も傾いていない時間にアパートに戻ってきたので、よっしゃ!走りにまくれるぜ!と喜んで海に向かった。しかもかんかん照り。最高の陽気。
今日はいつもよりも遠くまで行ってみようと決めて、駿河湾に面したコンクリの長ーい道をひたすら走った。
海も松も空も自分の足元まで全部がキラキラしてて本当に綺麗だった。
けど、あまりの暑さで2時間も走らないうちにバテてしまって、この分じゃアパートに帰り着く頃には靴の中まで汗でグッチュグチュになりそうだなと思ったところで引き返す事にした。
その時。
自分の目線の先に女の人が階段を登っているのが見えた。
『そうだ、自分もあの階段を登って海沿いに面したコンクリの道から千本浜公園の茂みの中の道を通って帰ろう』と考えて、女性が先にいる階段に駆け寄ったその時です。
僕はふと目線を上に向けた。
するとさっきよりも階段の上にいる女性の姿がハッキリ見えた。
デニムのワンピース。上から下まで前ボタンでとめるやつを全開にして歩いてる。
その瞬間なんだか肌色の水着を着ているように見えた。すぐ横は海だから、あの人は海で泳いできたのかなと思いながら僕は階段を駆け上がった。
僕が階段を登り切ると、さっきの女性は5メートルくらい先を僕に背中を向けて歩いてた。
自分の帰り道は女性が向かう方向と反対だったから、向きを変えて行こうとしたら海風が吹き抜けて、目の前にいる女性のワンピースがブワっとめくり上がった。
そしてケツが見えた。
そのケツには赤い紐がTの字でくっついてた。
真っ赤な紐パン。
あの時はじめて紐パンというものを見たが、パンツとしての機能を果たせるはずもない完全な紐だった。
あの時の僕は本当に目が点になっていただろう。
突然すぎるアクシデントを頭で整理できないまま『え…?』の状態で固まっていたら、女性が右のほうに曲がって行って、僕から見て横向きの姿が見えたとき、肌色の水着なんかじゃなく、なんにも着てなかった事がバッチリ分かった。
裸にデニムのワンピースを羽織ってパンツは紐。
ワンピースのボタンは全部外れてるからオッパイ丸出し。
それで真昼間の公園を堂々と歩いていた。
急ぐわけでもなく恥ずかしがってる様子もなく普通に歩いてた。
裸同然の女が視線の先にいるのに全くエロさを感じないほど自然で堂々とした歩き方。
エロさを感じなかったのはその女性が肥満体だったからかもしれないが、景色が綺麗な場所で天気もいいもんだから普通に子供から大人までわりと人の往来があるのに、人のことなんかまったく気にしていない様子でテクテク歩いてた。見せていると言うより、ただ出ちゃってるだけくらいの感じで。
僕はふと『これってもしかしたらAVとかの撮影なのかもしれない』と思って、だとしたら近くにカメラマンがいたりするのかなと周りをキョロキョロしていたら、どこからか僕と同じように周りをキョロキョロ気にしている様子のおっさんがやってきて、ゆっくりと女性のあとを追って行った。
そして、そのおっさんに続くようにまた別のおっさんがやってきて、前にいるおっさんと距離を測るようにゆっくりと歩いて行って、3人の姿がどっかに見えなくなったところで僕は帰る事にした。
『これ以上はいいや』と思った。
走ってアパートに戻っている途中で『そうか、あれが露出狂ってやつか!』ってやっと理解できた。
その後、大型2種の免許は実技学科共に無事1発で合格しました。