鬼
『すごい』の言い方は時代によって常に変化している。
超と激とかガチとかマジとか。
北海道の方言ですごいは『なまら』だ。ただ今はあんまり言う人はいなくなったかもしれないけど。
いつだか『鬼』だった時期もあった。
あの頃は楽しかった。
たとえば、3日間で2〜3時間しか寝てないって話してる奴がいたら、そいつは『おまえ鬼だな』と言われていたし、夕方くらいから朝までずっと飲み続けてたなんて話をしても、それは鬼ヤバかった。
ただめちゃくちゃ優しい事したって話となると鬼ではない。その場合『鬼』は使われない。
筋トレやりまくってバッキバキのマッチョになったらそれは鬼だろう。
もし10000ピースのパズルがあって、それを3日くらいで完成させたって人がいたなら、その人は『おまえ鬼だな』と言われるだろう。
鬼はぜんぜん寝なくても平気だし、酒もガッツリ飲みまくれるし、バッキバキのマッチョだけど、パズルなんかもやったりするわけだ。
米粒に信じられないほど細かい絵を書き込んだりしたとしても、その人は鬼と言われるだろう。
鬼は豪快だが、そういう手先の細かい作業だってこなせる。
たぶん24時間ずっと寝てたって人は鬼とは言われない。
だから鬼の島は基本的にみんないつも起きているんだろう。
で優しくはない。ものすごく厳しい人は鬼だなと言われるはずなので、やっぱり鬼が怖いのは確かだと思う。
でも、鬼は来年の話を聞かせると笑うという習性がある。
だから、万が一でも鬼に出くわしてしまったなら、その時はとっさに来年の話をするといいだろう。
『来年って〜笑』となるはずだ。
こういう風に考えていくと鬼の実像が見えてくる。
『鬼』という怪物をパッとイメージした感じのとおり、鬼は巨体で荒々しく、その豪腕に金棒を担いでいるだろう。
しかし、鬼の目にも涙と言うように鬼も泣くし、来年の話をすると笑うという可愛らしい一面もある。
そして意外にも手先の細かな作業も得意で、非常に働き者だ。
おそらく1ヶ月休みなく働いてる人がいたら、その人は『鬼すげーな』と言われただろう。
逆に怠けてる奴は鬼とは言われないはず。
だから、鬼はとてもよく働く。鬼稼ぐ。
鬼はたいして寝もせずにいっぱい働いて、そしてしこたま酒をかっくらって悪さする。
やはり悪い事はする。すぐに暴力をふるってくるだろう。
だが大丈夫。『渡る世間に鬼はない』というように、私達が暮らしている世間で鬼と遭遇してしまう事はないのだから。
余談だが『鬼の居ぬ間に洗濯』と言うように、洗濯は鬼がいない時に済ませておいた方がいい。