mountribalcamper

キャンプホリックの一人話談

街を走り、山を登り、キャンプして遊ぶ、の巻

はじめて◯◯した時の事(PART5歳)

はじめて何かをした時のことや、はじめて何かを思った時のことをよく思い返したりしているんだけど、俺が人生ではじめて『俺って薄情な人間なんだな』って思ったのが5歳の時だった。

きっと、俺って元から哀れみの心が他の人より薄いんだと思う。

産まれての人はみんな同じスタートを切るんじゃなくて、俺は最初から喜怒哀楽の(哀)がちょっと足りない設定だったんだろう。

 

あの時の事は今でも鮮明に記憶に残っている。

幼稚園に通っていた頃の事なんだけど、うちの近所に住んでた友達の裕二と2人で道路に絵を描いて遊んでいたんだ。

ふと、道路の先に目をやるとコチラに向かってくる当時で言うところのロードマンが2台見えた。

俺は歩道のほうに移動して、裕二に危ないからこっちに来いみたいなことを言った。

裕二は『うーん』くらいの返事をしながらそのまま地面に顔を向けて絵を描き続けていた。

 

その数秒後に大人が乗ったロードマンがすごいスピードで裕二に衝突して、宙に浮いて何メートルか先までぶっ飛んで行った。

すごい音がしたのかどうかも分からないほど一瞬の事だったけど、子供だった裕二がぜんぜん飛ばされてなくて、自転車に乗った大人の方が一回転しながらすっ飛んで行く光景をハッキリと覚えている。

俺は唖然としながらもすぐさま裕二に駆け寄って大丈夫か!みたいな声を掛けた。

すると、裕二は意識があるのかないのかの状態で頭から血を流しながら、あう…あう…と言った。

俺は本当にあるべき大事な感情が欠落しているんだろう。

あの時の事を思い出しながら書いているだけで、あう…あう…でちょっと笑けてしまう。

事故が起こったその時も俺は真剣な表情で大丈夫か!と言いつつも、あう…あう…と弱々しくうめく友達の顔を見て、クスッとしちゃっていたんだ。

でも、すぐにばあちゃんを呼びに家へ戻って、ばあちゃんが救急車を呼んでくれた。

そこからは俺はただ黙ってそこに突っ立って、裕二と自転車の大人が搬送されていくのを眺めているだけだった。

今思えばなんであのチャリの人は真昼間に子供が道路の真ん中で遊んでるのにノーブレーキでそこに突っ込んだんだろう。田舎とは言え見てないにも程がある。

その後、その大人がどうなったのかは知らないが、俺は次の日に幼稚園で開かれた全校集会のような場でみんなの前でステージの上に呼ばれ、園長先生の横に立たされた。俺の横には頭に包帯ぐるぐる巻きの裕二も立っていた。

園長先生がマイクを使って、昨日こんな事がありましたと裕二の事故についてみんなに説明し、その状況下を俺が素早く対応したおかげで裕二くんはこのとおり大事には至りませんでした、みたいな事を発表して、では皆さん拍手をとなり、俺は盛大な拍手を浴びた。

裕二は俺が笑った事どころか自分の身に何が起きてこうなってるのかも記憶にない様子だったが、俺はみんなの注目にさらされながら事故現場で笑っちゃった自分にたくさんの視線が突き刺さるみたいに思えて仕方なくて、早くこの会を終わりにしていつもの時間に戻らせてよ、と心の中で園長先生に願いながら裕二の頭のぐるぐるの包帯を見ていた。

 

これが俺の人生ではじめて自分の薄情さを知り、いたたまれない気持ちになった時の話。