イグニス・マグナスとの遭遇
あの日あの時の事は忘れない。
俺はいつもの見慣れた近所の道端でズッコケそうになるほどの衝撃を受けた。
なんの変哲もない道端の駐輪場にこれが停まっていた。
俺は『んっ』と立ち止まり、この黄色いマグナスをマジマジ見た。
『普通のママチャリなんだけど、マグナスって書いてあるな』
マグナスの意味は分からないけど音の響きは強そうだ。ゴツそうだ。
俺だったら飲んだら絶対悪酔いする粗悪な焼酎の名前にマグナスを選びたいところ。
咄嗟に写真を撮ったり、マグナスって口に出してつぶやいちゃってたし、顔近づけてジロジロ覗き込んだりしてたので、誰か来てマグナスを盗もうとしてるこそ泥だと思われたら冗談じゃないので、なんとなく『へ〜』って感じで過ぎ去ろうとしたら…
その時。
この駐輪場の向かいの駐車場にイグニスが停まっているのを発見してしまったんだ。
これだ。
ちょうど後ろ向きに停まっていたので、IGNISの文字がこっちに見えて、俺は『なにこれ!すごい!』と大変驚いた。
奇遇にも俺はマグナスとイグニスの間に突っ立っていて、それはなんて言うか天体の星と星を結んで星座を描く線に挟まれているような気分だった。
マグナスってチャリとイグニスって車が同じ場所に停まってる事に運命を感じたし、神話に登場する勇敢な2人の男の血と汗と涙の物語が現代に語り継がれて、それでマグナスとイグニスの星を結んでああいう星座になったんだよって、そんなありもしない空想を頭に巡らせて、その間に偶然居合わせた奇跡に感嘆した。
良い気分になり、俺は『これからはチャリンコの名前をよく見て歩こう!』と決めた。
そして、俺はある事実を知る事になる。
他にもマグナスがいた。
いて当然なんだけど、最初のマグナス発見以降にレクサスくらいあれもこれもって感じでマグナスを見かけたものだから、マグナスはたくさんの人に愛用されているんだなって事が分かった。マグナスはきっと良い自転車なのでしょう。
これなんかも『おやっ』と思わせるセンスで名付けられている。
マンドリンだ。
マンドリンと言えば
これなんだけど、あれもマンドリンなんだ。
あと、これは面白くはないけど
フルフォースアスファルトと書いてある。
フルフォースアスファルトって口に出して言いたくなるカッコ良さがある。
2〜3人でせーの!でフルフォースアスファルト!って言っても、なんかサマになりそうだ。
個人的にはこれが気に入っている。
フォーメーション。
自転車にフォーメーションと名付けるのはナイスなセンスだと思う。
残念な事に写真がないんだけど『ビタミンバイク』も友達に教えたくなる面白さがある。
これからも素晴らしい出会いに期待したい。
かしこみ、かしこみ、