木蓮が怖い
春が近づいて来ると梅の花が咲き出して、もう少しで桜も咲くな〜と花見が待ち遠しくなってくる。
そんな頃。梅と桜の間の今頃に木蓮が花を咲かす。都内の自分周辺ではそんくらいの時期。
木蓮も人気の花なんでしょう。いろんなところで見るし。
しかし僕はあれがなんか怖い。
その辺に植ってるのはだいたい白い花を咲かすハクモクレンで、たまに紫の花を付けるシモクレンも見かけるけど、木と花のコントラストが僕にはおぞましく見えてしまう。
いきなりデッカい花がモリモリ咲きまくって、木と花の調和が取れてないように思える。
もし、木蓮がこの世に存在してないとして、たとえば絵画教室で自分で想像した花を描いてみましょうって事になったとして、木にデカくて真っ白な花をモリモリ描きまくった絵を描いたら、先生から色の使い方とか花と木のバランスの事とかで苦言を呈される気がする。
花がデカくて色が真っ白だからか、なんだか僕には浮いて見えてしまうんだ。
紫のほうも毒々しいほど紫だから、あれもなんか怖い。
すぐにボタボタ花が落ちるところもなんか怖い。木蓮の花が落ちた道はすごく汚くなるのも幻滅させる。
イチョウの木に銀杏が成って、それが道に落ちて踏み潰されて異臭を放つのも最悪だけど、銀杏は食べられるのであっさりと道を汚しまくるイチョウと木蓮なら木蓮の負けだろう。
花見の主役の桜にも毛虫がつきまくる弱点はあるけど、桜の花のか弱い感じや可憐な様子と、木蓮のどぎつさは比べる事自体おかしいほどかけ離れている。
たぶん木蓮の花弁がもう少しうっすらとしてて、花が咲く時に葉も生えていたら、木と花と葉のバランスに調和が取れて、どれも強調しすぎない見栄えになるんじゃないだろうか。
想像としてはツツジみたいな感じ。
ハクモクレンを見る事が特に多いから思ってしまうのが、なんかこうジャミラの気味の悪さに近いように感じる。
ダダでもいい。
ハクモクレンとダダとジャミラを並べてみたら、共通する怖さが見て取れるんじゃないか。
『烈火の炎』の登場人物に木蓮ってキャラがいたけど、あいつより実物の木蓮のほうが僕には不気味に見えると連載していた頃から思っていた。
他の植物と交わる気がないんじゃないかと思うほど極端な実らせ方をするのは不自然なことのように思えるんだけど、まさかの自然への愛。
見かけによらないとはこの事だ。